著者/訳者:阿部 謹也
出版社:日本エディタースクール出版部( 1999-05 )
定価:¥ 1,890
単行本 ( 246 ページ )
ISBN-10 : 4888882924
ISBN-13 : 9784888882927
一橋大学の学長だった著者がいろんなところに出した原稿/スピーチをまとめた本なので、同じ話を何回も読むことになるけど、「教養」とは何か、大学とは何かということについて、分かりやすく理解できる本になっている。
まず、ヨーロッパで個人が発生したのは都市が出来て自分で職業選択の可能性が生まれてきたことと、内面が生まれてきたことが背景にあったことを説明している。内面を発見したことについては、キリスト教の浸透と、1215年のラテラノ公会議において告解(コンフェシオン)が制度になったことをきっかけにいかに、ヨーロッパの人々は生きるかという問いを持ち始めたという。
そして、教養の定義として、「社会の中での自分の位置を知ろうとする努力、あるいは知っている状態、あるいは知ろうとする努力の総体」としている。また個人の教養だけでなく「集団的教養」というものの存在を明らかにし、その定義を「自分たちが社会の進歩にどのように貢献しうるのかを知っている状態」として説明している。
「教養」というのは、何遍も言いますように、「古典を読む」というところから始まったように見えますが、そうではないのです。その前の段階があります。それは「自分はどうすべきかということを考える」ということ。これを敢えてやや抽象的にいえば「いかに生きるべきかを考える」と言うこと。 (p.55)
今日の教養という点では大学に入り、自分を知り自立した自分を発見し、社会と自分との接点を持つことが出発点となることを指摘している。
学生たちは親の絆から離れ、兄弟姉妹や友人との関係を整理し、自立した自分を発見し、そこで初めて世界に目が向くのである。 (p.174)
自分は大学に7年いて、この9月からまた授業に出ているけど、1年生の時に聞いた話が全然違う風に捉えられる。それは、自分と社会に対する認識が過去とは違っていて、より深い理解が得られるように感じている。
また、誠実に生きるということについて、「誠実に生きようと思えば考えるしかない。」と主張し、教養が不可欠であることを述べています。
大学という点では、ナチズムに繋がったベルリン大学が世俗社会から離れた「象牙の塔」であった反省をふまえて、こう述べています。
大学の主体性は世俗社会に対しての主体性であるということになる。かつての大学は象牙の塔として、あるいはエリート集団としての特権を持ち、世俗社会に対して超然とした姿勢をもっていた。これからの大学はそのようなものではなく、世俗社会の中にありながら、世俗社会を越えた視線をもっている人々の集団でなければならないのである。 (p.141)
この辺のところは、池田先生の思想にも繋がるところだ。第3回創価大学入学式のスピーチ「創造的人間たれ」に、
創価大学は、皆さんの大学であります。同時に、それは、社会から隔離された象牙の塔ではなく、新しい歴史を開く、限りない未来性をはらんだ、人類の希望の塔でなくてはならない。ここに立脚して、人類のために、社会の人々のために、無名の庶民の幸福のために、何をすべきか、何をすることができるのかというこの一点に対する思索、努力だけは、永久に忘れてはならない
(池田大作, 1973年, 「創造的人間たれ」創価大学自治会編『創立者の語らい1』)
とある。目的意識を失った知識ほど危険なものはない。オウム真理教等はその最たるものとして挙げられる。創価大学は、人間主義の哲学を根本として、人間のための価値創造を目指す大学だ。そこを忘れては、創価大学での学問にはならない。
また、この本の最後の方にカール・シュミットという社会学者の言葉を引用している。
人間は自分がおかれている環境にうまく適用している限りでその環境の本質を理解することは出来ない (p.230)
これは、自分にとってすごく意味の大きい言葉だと思えて、感動した。社会不適合というか、まぁ少々「生きづらさ」を感じてきた自分だからこそ、社会を本質的に理解することができるんだという風に思えるから。薄々感じてきたことではあるけど、社会学というのはそういう学問なんだと思う。ちょっと斜めから見るというか、すくなくとも正面から見ていたのでは見えない社会の本質を暴こうとしていて、ただしそれを放っておくのではなくて、社会学は人に問題意識を与えることにもなるし、社会を変えていこうとする気持ちから出発しているんだと思う。
さてさて、授業とこの文献を元に、「比較文化原論小レポート」を書かなくちゃいけないんだけど、うまくまとまらない。文章下手だ。5年前に書いたのはここにあるけど、設問と文字数がちょっと違うし、同じこと書いてもしょうがないし…。妥協できない性格だけに、レポートは困りますねぇ。適当にやろうっと。


シッダールタ